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【新刊案内】物語「教育」誤訳のままで大丈夫!?-Education のリハビリ、あなたと試みる!-

物語「教育」誤訳のままで大丈夫!?-Education のリハビリ、あなたと試みる!-

成田 喜一郎(編著)

これからの教育について考える
「教育」とは、学校で先生が生徒を教えることなのか?

Education の訳は「教育」で大丈夫!?現在の「教育」で大丈夫!?
明治時代から現在に続く日本の「教育」。「教育」とは,学校で先生が生徒を教えることなのか。
これに疑問や違和感を抱いた著者が、教育現場での長きに渡る経験や研究を通してEducation の新しい訳と本来の「教育」の取り戻すためのリハビリ方法を提案する1冊。

2023年6月15日 刊行/新書判 248ページ
定価1,200円+税
ISBN 978-4-904933-19-0
成田 喜一郎(編著)
 



編著者 成田 喜一郎 先生
東京学芸大学附属大泉及び世田谷中学校社会科教諭、同附属大泉中学校副校長のとき、同附属国際中等教育学校の創設に関わる。その後、同大学教職大学院の創設に関わり、東京学芸大学教職大学院教授、学校法人自由学園特任教授及び副学園長を歴任。現在は、日本ホリスティック教育/ケア学会会長、東京学芸大学大学院教育学研究科個人研究員、TOKYO854およびstand.fmのRADIO Personality。



目次

はしがき
第Ⅰ部 物語「Educationの誤訳『教育』の150年、今、新しい訳とリハビリに向かう」
第Ⅱ部 新しい訳「涵養/化育」へ:Educationのリハビリの仕方
第一章 【「はじめに問いありき」でいきませんか】ある中学校での試みをヒントに
第二章 【プランは逆向きデザインで考えてみませんか】A4判1枚のシンプルな方法!
第三章 【これからを見通すために、これまでを問い直し続けませんか】振り返りなんか越えてゆけ
第四章 【記憶を記録に残し未来につなげませんか】記録の仕方もいろいろ
第五章 【あなたと私、ライフヒストリーのデザイナーになってみませんか】「未来は過去に影響する」今、ここで試みる
あとがき
解 題

~~~本書から~~~

【はしがき】

 この本を手に取ってくださって、ありがとうございます。
 まずは、それだけでもとてもうれしく思います。
 あなたは、大学や大学院の学生さん?学校や大学の教職員の方ですか?それとも、お子さんをもつ親御さんですか?NPO法人や企業、行政などにお勤めになっておられる方でしょうか?はたまた様々なアート作品を創っておられる方でしょうか?私のように勤めを終えた地域の生活者市民/住民の方でしょうか?もしかすると、未知-未来をたくさん抱えている小中学生や高校生かもしれませんね。
 私がこの本を書こうと思ったときは、学校や大学の教職員の方々や学生のみなさんに手に取ってもらいたいと思っていました。もともと私は、長いこと学校や大学の先生をしていたから、教室や講義室などで学生さんや先生方と、たくさんの問いや気づきと学びとをともに呼び起こし引き出したり、養い育てたりしてきたことがありました。それらを一冊の本に書きまとめてこれから先生になろうとしている学生さん、学校や大学の先生方に読んでいただきたかったからです。
 しかし、今年の三月に学校法人自由学園をはじめ、専任・非常勤を含めて大学の仕事をすべて終えたあと、私は不思議なご縁で「TOKYO854くるめラ」というコミュニティFMのラジオ・パーソナリティ「なりっち」になってしまいました。
 ミキサー兼アシスタントの「あこちゃん」と私「なりっち」との掛け合いトークを中心に、リスナーさんからのおたよりを紹介したり、リクエスト曲をかけたり、さらに絵本や詩歌などを紹介する「よみきき」コーナーをもったりしてきました。
 リスナーさんは、電波が飛んでいる東京都小平市・清瀬市・東久留米市にお住まいの小学生・中学生・親御さんから高齢者まで多様な世代の方々、また、そのほかの地域や国内外でインターネットを通じ、スマホやパソコンでお聴きになっている方々です。
 なりっちとあこちゃんは、多様で立場の異なるリスナーさんと一緒に番組をつくってきたといっても過言ではありません。
 そうした経験を積み重ねてゆくたびに、未知-未来をたくさん抱えているこどもたちをはじめ、多くのおとなたちにも読んでもらいたいと思うようになりました。
 本書のタイトル『物語 「教育」誤訳のままで大丈夫!?―Educationのリハビリ、あなたと試みる!―』をご覧になってどうでしたか?
 「『教育』誤訳のままで大丈夫!?」「Educationのリハビリって何、それ?」「あなたって、私のこと?」とか、ずばり気になりますよね。
 この本を読み進めていくと、さらにたくさんの?はてな?がわき立ってくるかもしれません。読めば読むほど、モヤモヤしてくるかもしれません。
 ところで、あなたは、RADWIMPS(ラッドウィンプス)というロックバンドの「正解」(作詞・作曲は野田洋次郎さん)という楽曲をご存知ですか?
 この曲は、二〇〇六年当時、ある大学で私の講義を履修していた学生さんの一人で、そのあと、大学院で研究したり、学校や大学で先生をしたりしてきた津山直樹さんから最近おたよりが届き、「教室でこれを高校生や学生と一緒に聴いています。とってもいい曲ですよ!」とうかがったので、早速、聴いてみました。
 「あぁ 答えがある問いばかりを 教わってきたよ そのせいだろうか/僕たちが知りたかったのは いつも正解など大人も知らない……あぁ 答えがある問いばかりを 教わってきたよ だけど明日からは 僕だけの正解をいざ 探しにゆくんだ……」
 この曲を聴いて、長いこと学校の先生だった自分自身を想い起こしてみると、改めて生徒や学生に◯×△が付く百点満点のテストを出し続けてきたことを思い出します。
 また、テストはテストでも生徒たちがテストを好きになってしまう「ルカーワ型テスト」という摩訶不思議なテストを開発したことも思い出してきました。このテストは、百問出題し、その中から自分が確実にわかる問題だけ十問とか二十問だけ選び、解答するテストでした。要は自分が今ここで確実にわかることとわからないことを分けることをめざすテストで、わからなかった、できなかった問題はテスト後に自らわかるようにしておくといい点数がとれるテストでした。生徒たちはいい点をとる喜びと同時に、「テストとは何か」という本質的な問いへの答えを見つけ出していきました。
 さらに、ペーパーテストではありませんが、「『いのち』をテーマに世界に一冊しかない本を書こう」(社会科を越えてもいい、製本も自分で試みる課題)、「『石油』とは何か、レポートを書こう」(「石油」の総合的な研究を呼びかける課題)、「絵本『ちびくろ・さんぼ』の総合的研究をしよう」(小さいころに読んだ経験があり、黒人差別の指摘を受け絶版になっていた時期の課題)、「学んだことや今思っていることを新聞の投書欄に投稿してみよう」(「Newspaper in Education:教育に新聞を」の呼びかけに応答する課題)など、おとなでも難しそうな「問い」を中学生に「夏から秋にかける課題」として出し続けてきたことも思い出させてくれました。
 そして、ルカーワ型テストによって、生徒たち自身が判断し、どんな問いへの答えがわかるのか、わからないのかを知ることもできたし、生徒たちの課題レポートや作品を読み、どんなテーマに興味・関心があるのか知ることができ、さらに生徒たちがどんな問いや気づきと学びを呼び起こし引き出し、どんなふうに養い育っていくのか、私自身ができることは何か、気づかせてくれました。
 本来、「Education/教育」とは、こどももおとなにとっても問いや気づきと学びを自ら引き出し養ってゆく試みではないでしょうか。その意味で、その本来を取り戻すためには、今、私たちにはリハビリが必要なのかもしれません。この本では、誰か偉い権威ある研究者の学説、海外の新しい理論や哲学をもとに、問いへの「正解」をお伝えするのではなく、むしろ、あなたと一緒に新たな問いとその応答へのヒントを探していこうと思っています。
 この本の構成は、「目次」のようになっていますが、どこからお読みになっても構いません。おすすめは、「あとがき」からお読みになってはどうか、という提案です。
 かなり難しめの言葉がたくさん出てきますが、?はてな?のまま、ページをめくり読み進めてみてください。この本を読み終えたあとに再び読み返すと、きっとあなたの中の「変化」に気づくはずです。また、章によっては、先生をめざす学生や先生方に向けて書き始めていたところもあります。ちょっと自分にとってはよくわからない、関係なさそうだと思ったら、読み飛ばしていっても結構です。ただ、各章の始めにその章の「概要」が書いてありますので、そこだけ読んでみるのもいいです。いずれにしても、この本の内容をわかろうとするのではなく、「わからないこと」や「問い」を発見するだけでも意味があると思います。わかるとわからないとの境界、学生や先生方とあなたとの境界を「越境」することで、「Education/教育」のリハビリになるのではないかと思っています。
 あと、この本の特徴として、こうした紙の本を読むだけではなく、章や節などにQRコードや検索したいキーワードなどがあります。スマホをかざすと、「なりっち」のラジオやブログにジャンプできます。もっと具体的なことや詳しいことを知りたくなったら、お話を聴いたり、読んだりしてみてください。
 この本には「注」が付いていません。私が、書くにあたって大切なヒントをいただいた本などは本文中にご紹介しているところがあります。難しめの本が登場しますが、気になった本がお近くの公共図書館や大学図書館に所蔵されているのかどうか、検索できる「カーリル」という検索サイトを紹介してあります。「カーリル」は全国の約七四〇〇以上の図書館からその本の所蔵の有無、貸出状況が検索できる「日本最大の図書館蔵書検索サイト」です。お近くの公共図書館に所蔵されていない場合でも連携可能な図書館から移送してくださり、地元の図書館で借りたり読んだりすることができます。大学をやめて研究室も研究費もなくなった私は、ジャンルを越える多様な本を「カーリル」様に探していただき、借りたり移送していただいたりしています。
 また、国立国会図書館(東京本館・関西館。東京の上野にある国際子ども図書館)は多くの本の蔵書がありますが、貸出をしません。しかし、今、急速にデジタルコレクション化が進み、地元の公共図書館や自宅のパソコンで閲覧できたりコレクションが増えています。もちろん、ご自分で買い求めて手元に置いておきたい本はありますよね。本書もぜひ、多くの方々にとって、その一冊になりますこと、祈念しております。
 なお、あとがきの後ろに「解題」を付けました。私がどんな理論的哲学的な探求をしてきたのか、この本を書くに至った研究-実践者としての理由や根拠などを読むことができます。ご関心があれば、ぜひ、そこもお読みいただけるとうれしいです。
 

  二〇二二年十一月三日 成田 喜一郎

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